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生活の拠点:離婚すると、家はどうなる?

更新日:2020年07月14日
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夢のマイホームを持ったのも束の間、ローン完済前に離婚することになってしまった場合、不動産(家)はどのように扱われるのでしょうか。
 協議離婚における財産分与の取り決めから住宅ローンまで、深くご紹介していきたいと思います。

財産分与

 財産分与とは、離婚時に原則として夫婦の共有財産を半分ずつに分けることを指します。
『共有財産』とは、「婚姻時に夫婦が協力して築き上げた財産」のことです。ですので、婚姻前から所有していた財産(特有財産と呼びます)や、相続した財産は、相続の時期に関わらず、財産分与の対象外となります。

住宅ローンは財産分与の対象になる?

 結論から申し上げますと、婚姻中に夫婦で住んでいた家(不動産)は、住宅ローンが残っていても、離婚の際は財産分与の対象になります。

住宅ローンの名義

 財産分与で不動産(家)の所有権を得たとしても、住宅ローンは金融機関との契約。住宅ローンの名義は変わりません。

トラブル回避

 そのような財産分与ですが、問題が生じる前に、「分与額」「支払期間」「支払方法」等を記した離婚協議書や、強制執行力のある公正証書を作成しておく方がよいでしょう。

連帯保証人

 仮に、夫の名義のローンの連帯保証人に妻がなっていたとします。そして離婚に至り、夫が家を出た後も、連帯保証人は妻です。そのうえ、もし夫が支払を滞らせたりした場合、金融機関(銀行等)から連帯保証人である妻の元へローンの請求がやってくるのです。
 これを無視し続けた場合、競売や自己破産のリスクも高まります。

「不動産(家)」にまつわるポイント

 財産分与するためにも、まずは不動産の情報を把握しなければなりません。

不動産の名義

 土地・建物が誰の名義になっているのかを確かめる必要があります。これを確認するためには、“法務局”で不動産の登記簿謄本を取得します。すると、不動産にどのような担保権(抵当権等)が設定されているのかも、判明します。

担保権:ある物を債権の担保に供することを目的とする権利。
    普通は担保物件を指す。

不動産の価格

 これは不動産業者に査定をしてもらいましょう。不動産の価格を知っておくことは、非常に重要です。なぜなら、不動産の売却の可否、つまり売るか住み続けるか、の、方針に関わってくるからです。

住宅ローンの契約内容

 契約書類一式を確認する必要があります。一般的には、以下のようなパターンが多いです。

<パターンA>

夫:主債務者

妻:連帯保証人

<パターンB>

夫:連帯債務者

妻:連帯債務者

<パターンC>

夫:主債務者

妻:負担なし

(保証協会等の利用)

住宅ローンの残高

 住宅ローンがどのくらい残っているのかも、当然重要です。住宅ローンの残額は、「償還表」等で確認出来ますので、現在の住宅ローンの性格な残額はしっかりと把握しておきましょう。
●

不動産の名義

 夫婦で共有名義になっている不動産があったとして、夫婦が離婚したからといって自動的に名義が変わるだけではありません。
 夫婦間で離婚に伴う財産分与の協議をし、その協議に基づいて、不動産の名義変更をすることによって、共有関係を解消することが出来ます

複雑な“住宅ローン”

 しかし、住宅ローンについては、夫婦間の協議だけで決められるような、単純な話でないこともあります。
 例えば住宅ローンの契約内容で見たように、夫婦の一方のみが借入しているという場合、夫婦が連帯債務者である場合等、様々な様態がありますが、住宅ローンの契約の中で、銀行の承諾なく担保不動産の名義を変更することを禁じている場合がほとんどだからです。
●

名義変更と税金

 共有不動産を一方の名義に変更する際の税金についてご説明します。
■贈与税⇒原則、かかりません
  (分与額が多すぎる場合、脱税目的だと認められる場合は贈与税がかかる可能性あり)
■譲渡所得税⇒原則、かかります
  (譲渡所得が発生してない場合は非課税、居住用不動産の場合は3,000万円の特別控除あり)
■不動産取得税⇒原則、かかりません
  (分与額が多すぎる場合、脱税目的だと認められる場合は贈与税がかかる可能性あり)
■登録目居税⇒必ずかかります
  (登録免許税は登記名義を変更する際に納める税金なので、必須)

登録免許税:登録免許税法に基づき課せられる、国税で流通税をいう。

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売る?住む?

 不動産(家)の財産分与が判明したところで、その不動産を売りに出すか、それとも住み続けるか、も重要な論点となります。

①売る

 売却を視野に入れた場合、住宅ローンがどの程度残っているかが非常に重要です。
☆不動産の査定金額よりもローンの残額が下回るのであれば、不動産を売却することにより利益が出ることになります。
★不動産の査定金額よりも住宅ローンの残額が上回るような場合には、仮に不動産を売却したとしてもローンだけが残ることになり、離婚後もローンの支払を継続せねばなりません。

アンダーローン

☆ローン残債より家の価値の方が上回ることを、アンダーローンと呼びます。この査定結果だと、不動産を売却すると利益が生じます。
 ■家の価値■ >> □残債□
 まずは売却代金をローン残債の支払に充て、それでも残ったお金は、夫婦で2分割する財産分与が望ましいでしょう。

オーバーローン

 ★ローン残債より家の価値の方が下回ることを、オーバーローンと呼びます。この査定結果だと、不動産を売ってもローンが残ってしまうので、通常の売却は出来ません。そうなると、ローンの負担・住宅ローンの名義・財産分与……と、課題は山積みです。
■家の価値■ << □残債□
 それでも売却を望むのであれば、任意売却という方法があります。ですが、オーバーローンの場合は、専門家のアドバイスが必須だということをご承知ください。

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②住む

 よほど家(不動産)に愛着があるのか、それとも上述のように売るに売れないのかを問わず、当該不動産に住み続ける場合があります。夫側と妻側に分けて見ていきましょう。

夫が家に住み続ける場合

 まず、不動産が夫名義であれば、そのまま夫が住み続けて住宅ローンの支払も行っていくということでよいでしょう。
 但し、妻もローンの負担をしていた場合、夫婦間で「夫が全額支払う」と合意をしても、金融機関に対する責任を免れることは出来ません。
 妻が債務を免れるためには、金融機関と交渉して、了承を得ることが必要になりますが、それは基本的には難しいものです。仮に妻が保証人を外れるとなれば、別に保証人になってくれる人の充当や、まとまったお金を入金することを求められます。

妻が家に住み続ける場合

 では妻は、と考えると、かなり難しい問題が生じてきます。
○夫が住宅ローンを支払う
 妻が親権者になる場合には、養育費をもらう代わりに、夫が住宅ローンを支払い続けるという方法が考えられます。しかし、夫にとってはもう住んではいない家。ローンの支払を継続してくれる保障はありません。
 夫がローン支払を滞納すれば、妻は立ち退きを迫られることになる可能性があるため、実務的にも法的にも不安定な立場におかれてしまいます。
○妻が住宅ローンを支払う
 住宅ローンの債務者を変更して、妻が債務者となりローンの支払をしていくことは出来るのでしょうか。
 債務者の変更については、妻が安定的な職業に就いており、それなりの経済力がなければ難しいのが実情です。
 但し、債務者を夫にしたまま、事実上妻が支払っていく、というのも一手です。

○住宅の名義
 妻が家を取得する場合、名義を夫のままにしておいてしまうと、後々夫の財産として扱われてしまう……そんな事態が生じかねません。しかし、銀行側は、住宅ローンを完済するまでは、名義変更を了承してくれることはあまり望めません。
 そのため、離婚の際には、「住宅ローンが完済した後は妻の名義にする」等、名義変更について明確に合意しておく必要があります。
 しかし、本件に関しては、登記請求権の時効の問題もあるので、専門家に相談した方がよいでしょう。

終わりに

 「不動産」という高額な財産のやりとりは難しいことが多く、財産分与の判断も容易ではありません。また、DINKSであればすぐに(アンダーローンの場合、)売却してもよいですが、子がいると、生家として住み続けたい、という気持ちもあるでしょう。
 現在でもなお金融機関や契約では、男性が主導権を握り、女性の方が立場が低いような扱いが多いですが、今後の女性の社会的地位の上昇が顕著になるにつれ、保証人問題等も解決しやすくなってくるのかもしれません。

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離婚慰謝料弁護士ガイド 編集者

離婚問題に関する記事を専門家と連携しながら執筆中 離婚問題でお悩みの方は是非参考にしてみてください。 また、お一人で悩まれているなら一度弁護士へのご相談を強くおすすめ致します。 今後も離婚問題に関する情報を多数発信して参ります。

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