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離婚後に離婚慰謝料請求をすることは可能なのか?

更新日:2019年04月09日
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離婚をする時には夫婦で話し合いをして、子供のことやお金のことを決めます。
 その中に離婚慰謝料の取り決めも含まれますが、場合によっては離婚をする前に取り決めを終わらせることが難しいケースもあります。
 離婚後に離婚慰謝料請求をすることは可能なのでしょうか?

離婚後に離婚慰謝料請求ができるケース

結論から言うと、離婚後にも離婚慰謝料請求をすることは可能です。
しかし、場合によっては離婚慰謝料請求ができないこともあります。

慰謝料は「相手方の違法行為によって受けた精神的被害を補てんするために、その相手方に請求する損害賠償金」のことです。離婚慰謝料請求をするためには、配偶者から受けた精神的被害があることが前提となるということです。

ではまず、離婚後に離婚慰謝料請求ができるケースからみていきましょう。
●有責配偶者がいること
 有責配偶者とは、離婚の原因を作った配偶者のことを言います。離婚の原因の内容としては不倫やドメスティックバイオレンス(DV)などが挙げられます。
 離婚慰謝料請求をするには有責配偶者がいることが大前提となります。

●離婚慰謝料請求の時効を迎えていないこと
 離婚慰謝料請求には時効があります。
 具体的には次の通りです。

消滅時効:配偶者の不貞行為を知った時から3年間

除斥期間:配偶者の不倫関係が始まったときから20年間

※除斥期間とは、法律関係を速やかに確定させるため、法律が定めた一定期間を経過すると権利が消滅する制度のことです。
  
消滅時効と除斥期間のどちらか短い方の期限を迎えてしまったら時効が成立します。
多くは消滅時効を迎えるほうが早いようなので、「3年間」という期間を覚えておいた方が良いでしょう。

この時効の起算点は、離婚慰謝料請求をする事情によって異なります。
例えば不倫による離婚であれば、次のように起算点が異なります。
 不倫という行為から生じた精神的苦痛に対する離婚慰謝料請求をする場合
  →不倫の事実を知った時点から期限がスタートする。
不倫によって婚姻生活が破たんしたことによって生じた精神的苦痛に対して離婚慰謝料請求をする場合
  →不倫によって婚姻生活が破たんした時点から期限がスタートする。
不倫によって離婚をしたことによって生じた精神的苦痛に対して離婚慰謝料請求をする場合
  →不倫によって離婚をした時点から期限がスタートする。

時効を迎えてしまうと、離婚慰謝料を受け取ることは※難しくなります。
                             

難しくなるということは、絶対に受け取ることができなくなるということではありません。
時効が成立していても、離婚慰謝料請求権は自動的には消滅しないからです。
有責配偶者側が
・時効の成立を主張しない(主張しない限り慰謝料請求権は消滅しないため)
・時効は成立しているが慰謝料を支払う意思がある
・時効は成立しているがそのことに気が付いておらず慰謝料の支払いに応じる
といった場合には慰謝料を受け取ることができる可能性があります。

もし時効期間が直前に迫っている場合に離婚慰謝料の請求をする場合は、次の方法を使ってみてはいかがでしょうか。
①内容証明郵便を送る
 内容証明郵便などによって離婚慰謝料の請求をすることによって、時効を一時停止することができます。この請求をした時から6ヶ月間は時効の完成を阻止することができます。
②裁判を起こす
 裁判によって離婚慰謝料の請求をすれば、時効の期間はゼロに戻り、期間が再スタートします。いよいよ期限が迫っている場合や、内容証明郵便を送ってから6ヶ月以内に話し合いに決着がつかない場合などは裁判を起こして時効の期間を延ばすことができます。

離婚後に離婚慰謝料請求できないケース

 次に、離婚慰謝料請求ができないケースを確認しておきましょう。

 離婚をする際の話し合いをする際に「離婚協議書」を作成して子供のことや財産のことを書面に残すことがありますが、その書面の中に「清算条項」といって“離婚協議書に記載した内容以外に夫婦間に何らの請求権も存在しない”ことを記載しておくことがあります。具体的には次のような文章が記載されます。
 「夫●●と妻●●は、本件離婚に関して以上をもって円満に解決したことを確認し、離婚後は財産分与、慰謝料など名目の如何を問わず、互いに何らの財産上の請求をしない。」
 「当事者双方は、本件離婚について債権債務が一切ないことを相互に確認する。」

 離婚協議書にこのような清算条項を記載していた場合は、離婚後は離婚慰謝料請求をすることはできません。この取り決めが強迫などによってなされたものなどのよほどの特別な事情が無い限りは清算条項の効力を覆すことはできないからです。
 
 離婚後に再び紛争を起こさないようにするための記載ですが、このようにマイナスに働くこともありますので、離婚協議書を作成するときは要注意です。

離婚後に離婚慰謝料請求をするデメリット

 離婚慰謝料を離婚時に請求しなかった場合は、そこまで精神的苦痛がなかったと判断されて、離婚慰謝料の請求をすることができたとしても多くの金額を請求することは難しくなる可能性があります。
 慰謝料の金額は法律によって定められているわけではありませんので、夫婦の話し合い次第では本来たくさん貰えるはずだった慰謝料がかなり減額されてしまうかもしれません。そのため、離婚前に離婚慰謝料を請求しておくのがベターです。もし配偶者が不倫をしていたことをその当時は知らなかったという場合は話が変わってきますので、弁護士などに相談したほうが良いでしょう。

離婚後に離婚慰謝料請求をする方法と押さえておきたいポイント


 ●離婚後に離婚慰謝料を請求する方法
  ①話し合い
   直接元配偶者と合って話をすることもできますが、一般的には内容証明郵便でのやり取りによっての話し合いをします。書面によってやり取りをすることによって、内容を明確に伝えることがでることや、やり取りの記録を書面に残すことができるというメリットがあります。
   この話し合いによって離婚慰謝料について合意がなされれば、離婚慰謝料支払いの示談書などを作成することになります。

  ②調停・裁判
   話し合いによっても離婚慰謝料の合意がなされなかった場合は調停を申し立てることになります。しかし、任意の話し合いによって合意をしなかった相手方が調停で合意をする可能性は低いと考えられます。その場合は地方裁判所に訴訟を起こすことになります。
   訴訟を起こした場合は弁護士に依頼するケースがほとんどですので、弁護士費用が発生します。
   裁判によって離婚慰謝料をもらえるかどうか、相手に支払い能力があるかどうか、離婚慰謝料と弁護士費用を計算した時に果たして自分の手元にお金が残るのかどうか…など、色々なことを総合的に判断してから訴訟を起こさなければなりません。
   訴訟を起こす前に、一度弁護士に相談したほうが良いと思われます。

 ●証拠品が重要
証拠品が無ければ、相手側から離婚慰謝料請求の原因となった不倫やDVの事実を否定されてしまう可能性があります。
もしも証拠品を持っている場合は大切に保管しておきましょう。

 ●感情的にならない
  感情的になってしまったら、話し合いが進まなくなってしまったり、話し合うべき内容が話せずに終わってしまう可能性があります。
  許せない気持ちもあるかもしれませんが、話し合いをすべき内容をまとめておいて、冷静に話し合いができるようにしましょう。

わからないことは弁護士に相談しよう

 離婚慰謝料の請求ができる事案かどうか、訴訟を起こすべき案件なのかどうか、素人では判断しづらいケースが多くあります。
 まずは一度法律のプロである弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

まとめ

 離婚後に元配偶者とのやり取りをするのは気がひける部分があるかもしれませんが、自分が辛い思いをした分はきちんと償ってもらいたいものですよね。
 離婚後も離婚慰謝料の請求ができることがわかりましたので、離婚後だからとあきらめずに請求を検討してみましょう!

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離婚慰謝料弁護士ガイド 編集者

離婚問題に関する記事を専門家と連携しながら執筆中 離婚問題でお悩みの方は是非参考にしてみてください。 また、お一人で悩まれているなら一度弁護士へのご相談を強くおすすめ致します。 今後も離婚問題に関する情報を多数発信して参ります。

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