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離婚における名字の選択と“子の福祉”

更新日:2020年05月07日
離婚における名字の選択と“子の福祉”のアイキャッチ

人をカテゴライズするための「名字」。婚姻(結婚)で変わることは皆さんご存知だと思います。しかし、離婚の場合はどうでしょうか。離婚した後、名字を変える人と変えない人がいることにお気づきですか?
 いざという時、あなたは夫の姓と旧姓のどちらを選びますか?

夫婦同氏原則

 民法第750条によると、夫婦は同じ名字を使わなければなりません。条文では「夫又は妻の氏を称する」と定められているので、どちらかを選ぶことが出来ます。
 しかし、実際には95%以上が夫の氏を選択しているのが現状です。
 ちなみに、『選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)』は、現時点では認められていません。

戸籍上の変化

 離婚をすることにより、まず初めに手を付けなくてはいけないのが“戸籍”です。戸籍は離婚によりどのように変化が生じるのでしょうか。

妻について

 婚姻時に、夫が筆頭者である戸籍に入っていた妻は、離婚すると夫の戸籍から除籍されます。子どもがいなければ、妻は離婚後に①自分を筆頭者として新しい戸籍を作る②結婚前の親の戸籍に入る、のどちらかを選択しなければなりません。

子について

 夫の戸籍から除籍された妻は、子どもと一緒に「②結婚前の親の籍に入ること」が出来ません。そのため、新しい戸籍を作り、その戸籍に子どもを入籍させます。
 妻が夫の戸籍から除籍されても、親権がどちらに持たれるとしても、子の戸籍はそのまま(夫の戸籍のまま)残ります。そのため、妻が子を自分の戸籍に入れたいのであれば、自発的に入籍の手続をしなければなりません。

夫の姓・妻の旧姓、どちらを選ぶ?

 以下のような理由のため、どちらを選ぶかは熟慮しなければなりません。
 ・別れた夫の姓を名乗り続けることに抵抗がある
・ビジネスの場で姓が変わるのは外部関係者との兼ね合いがある
・通称名では出来ない仕事をしている(国家資格の下働いている等)
といったように、姓に関する問題は少なくありません。

メリットとデメリット

 ここでは、夫の姓を選ぶか、旧姓を選ぶか、についてお話したいと思います。それぞれのメリットとデメリットを見ていきます。

夫の姓を名乗るなら

 夫の姓を選択した場合、メリットとしては運転免許証、パスポート、住民票等、生活面に重要な公的書類の書き直しをせずに済むという点です。
 また、ビジネスシーンにおいても、社内だけでなく取引先等とのやり取りのうえで話がスムーズに通りますし、離婚したということを知られなくて済みます。
 しかし、このためには、“法律上の手続”を要します。

必要な手続

 婚氏(元夫の姓)を名乗るためには“法的手続”が必要です。それを怠ると、『離婚復氏』と呼ばれる制度により、離婚後、自然に旧姓に戻ってしまうのです。
 そこで、婚氏を名乗り続けたければ、具体的な方法として、離婚の日から3ヶ月以内に、「離婚の際に称していた氏を称する届」を市区町村役場に提出しなければなりません。これにより、妻は離婚前の姓をそのままにすることが出来ます。

旧姓を名乗るなら

 まず挙げられるのが、自分が離婚したという事実を世間に広く知らしめてしまう、ということです。近年シングルマザー、シングルファーザーが広く使われ始めましたが、このような言葉はあまりよいイメージがない時代もありました。

放っておけばそのままでいい

 上述の通り、旧姓に戻るためには特別な手続はいりません。ただ、民法の上では、3ヶ月間という猶予があります。
 それは、「3ヶ月間でじっくり考慮してください」という法律側からの配慮です。認められるのは3ヶ月。いつでも変更が出来るわけではありませんのでご注意を。

3ヶ月過ぎてしまったけれど、変更がしたい!

 後になって、どうしても姓の変更をしたい場合、家庭裁判所に「氏の変更許可の申立」をし、裁判官から変更を認める審判を下してもらわなければなりません。
 氏の変更が認められるためには、「やむを得ない事情がある」場合に限られています。これまでの審判を参考にすると、よほどの事情がない限り、認められることはほぼないと言えそうです。

泣いている子供

子どもが受ける影響

 ここまでは当事者にフォーカスを当ててきましたが、夫婦間の問題でいちばん巻き込まれてしまうのはやはり子どもです。“子の福祉”という観点に立ち、問題とその解決を考えていきます。

結局、損害を被るのは“子ども”

夫婦であった二人の間に子どもがいる場合、両親はその子が置かれている状況や環境、特に学校での友人関係等を慎重に検討する必要性があることは言わずもがなです。
突然名字が変わってしまうと、子どもは困惑してしまいます。そう、結局被害者は子どもたちなのです。

子どもに対する周りの視線

 本人の混乱も未だ冷めやらぬうちに、周りの子どもたちは、「なぜ○○くん/さんの名字は急に変わったの?」と疑問を持つことになります。
 クラスメイトたちは、「自分にはパパもママもいるのに、なぜ○○くん/さんにはパパがいなくなってしまったのだろう?」と不思議がり、結局、本人が「パパとママは離婚した」と言わざるを得なくなってしまうのです。

名字を変えるタイミング

 そこで、親権を得ても妻が旧姓ではなく、子どもに誤解を与えぬよう、婚氏を選ぶケースがあります。これは、特に、子が小学校中学年以上の場合が多いようです。幼稚園児の前後の時期であれば、思い切って旧姓に変える方も少なくありません。

子の氏の変更許可の申立

 上述のタイミングを見た上で、子どもが父の戸籍に残ったままにしておいた場合、子の姓を自分と同じに変えるためにはどうしたらよいのでしょうか。

「子の氏の変更許可の申立」をするには

 父親の戸籍に残ったままの子どもは、「子の氏の変更許可の申立」を家庭裁判所にします。申立を行う家庭裁判所は、子の住所管轄の裁判所です。そして手数料は、子ども1人につき800円と、切手代がかかります。

申立をする

 「子の氏の変更許可の申立」は、子どもが15歳未満の場合には、親権者が本人に代わって変更手続を行います。
 なお、このように姓を変えた子は、成人になってから1年以内に届出をすれば、前の姓に戻ることが出来ます。

終わりに

 「名字が変わる」ということは、婚姻時でも離婚時でも、法律上はもちろん、普段の生活の中でも大きな影響があります。そしてそれは、上述のようにとても手間のかかる作業が必要だということがお分かり戴けたと思います。
 自分の生活上の氏を超えて、子の姓までも操作することは手間がかかりますが、それは初めから両親のせいであると言っても過言ではありません。ですので、離婚を選んだ親の犠牲にならないよう、何よりも“子の福祉”を重視して動くということが最重要項目でしょう。

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離婚慰謝料弁護士ガイド 編集者

離婚問題に関する記事を専門家と連携しながら執筆中 離婚問題でお悩みの方は是非参考にしてみてください。 また、お一人で悩まれているなら一度弁護士へのご相談を強くおすすめ致します。 今後も離婚問題に関する情報を多数発信して参ります。

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