離婚を考えている中で、離婚解決金という言葉を知っている方はいらっしゃいますか。離婚解決金とは、皆さんご存知の「和解金」とも呼ばれ、円滑に離婚を解決に導くためのお金を指します。
この耳慣れない離婚解決金について、その性質をご紹介していきます。
離婚を進める上で支払いが求められるお金の種類としては、
○財産分与
○慰謝料
○養育費
○婚姻費用
○年金分割
等があげられますが、この他に、又はこれらを包含するものして、離婚解決金というものを支払うことがあります。
離婚解決金は、「はっきりとした名目がない」のが特徴です。
協議離婚において、相手方が離婚になかなか応じてくれないことがあります。
妻からしてみると、婚姻・出産のために、フルタイムで働くことが困難になっていることがあります。すると、離婚してから自立出来るまでには、時間と当面の生活費が必要になります。
そのため、離婚した後に経済的に困窮する恐れがあるため、妻は離婚の申し出に二つ返事で応ずることが出来ません。
そのように妻が離婚を躊躇している場合、夫は、妻の合意を得るため、妻に対して「扶養的財産分与」として財産分与の額を高めに設定することもあれば、又は「離婚解決金」という名目で金銭を支払うこともあります。
離婚解決金は、内容について曖昧な性質を持ちます。
この場合の離婚解決金の中身は、財産分与・慰謝料であることもありますし、あるいは離婚後の女性の生活費、ということもあります。
夫側としては、「自分は悪くないから慰謝料は払わない」という方も多数ですが、「離婚後の(元)配偶者が生計を自ら立てるまでの生活のためのお金」と聞くと、「それなら少し援助しよう」という気持ちにもなりやすくなります。
支払われるお金の名目はなんであれ、「離婚解決金だ」と言ってしまえば、他者からは内容は分かりません。慰謝料は"自分が悪い"と認めたように見えてしまいますが、離婚解決金と言えば、夫の周りの心証も悪くはないことも多いでしょう。
この考え方は曖昧模糊とした解決ですが、実務上は非常に使い勝手がよい方法だと言えます。但し、この離婚解決金ですが、税務署には評判がよくないようです。
別れる相手に渡すお金として慰謝料がありますが、離婚解決金とはどう異なるのでしょうか。
まず、慰謝料とは、精神的苦痛を与えたことへの損害賠償を指します。これに対し離婚解決金は、離婚に応じてもらえるよう、離婚に必要なお金を渡すことです。
そして慰謝料は損害賠償としてのお金ですが、離婚解決金はあくまで離婚をスムーズに解決するためのお金であり、不法行為無の有無も関係ありません。
慰謝料とは違い、(不貞行為等の)離婚原因がなくても、離婚解決金の支払いは行うことが出来ます。それにより、離婚する際に荒波が立つことを抑えてくれるのです。
また慰謝料の場合、民法に請求する根拠が明確に定められていますが、離婚解決金の場合、法律上の請求する根拠は不透明です。
したがって、基本的には、離婚解決金を裁判で請求することは出来ないと考えられています。
しかし、離婚解決金の特長を活かして、協議離婚や調停離婚で利用されることはしばしばあります。
離婚解決金は離婚原因がなくても支払いが可能であるため、一般的に慰謝料と違い支払う側が悪いというイメージを持ちません。
このことにより、離婚解決金はどちらの名誉を傷つけることなく、相手方にお金を支払うことが出来、問題なく離婚に応じるように解決出来ることが多いのです。(既述)
結論から申し上げると、離婚解決金の相場はありません。よって、当事者同士の協議により、"妥当な金額"を決定します。
離婚を円満に進めるための離婚解決金ですが、相手方が離婚したくがないために、離婚解決金の金額に不満を示すことがありますので、話し合いは重要です。
相場はありませんが、場合よっては1,000万円以上の支払いがなされることもあれば、100万円程度で離婚の合意が得られることもあります。金額の高低には差があるのは当然ですが、妻が専業主婦だった場合等については、夫がそれなりの誠意を表すことも重要です。
その柔軟性により幅広く使える離婚解決金ですが、裏面には当然のようにデメリットも存在します。
離婚解決金は曖昧な性質であるからこそ、本来は慰謝料請求が出来ない事案でもお金を得られることがあります。そして、それにより、相手方の離婚に対する合意を求めます。
そんな離婚解決金は、内容が曖昧であるがため、離婚後に新たに慰謝料等のお金を請求されるおそれがあります。
相手方に離婚解決金を支払って離婚の合意を得た時には、解決金の支払いを記した離婚協議書などの契約書面を作成しておく必要があります。
それがなかった場合、例えば離婚後に、財産分与や慰謝料等の名目で、相手方から金銭請求されるおそれがあります。
そのため、離婚解決金の支払いを条件として離婚を成立させる時には、支払った側が離婚協議書等において、清算条項として全て解決した、という旨の確認の文言を忘れずに確認しなければなりません。
離婚にまつわるお金は何種類かありますが、それらに対する税はどのように課されるのでしょうか。離婚解決金とともに見ていきたいと思います。
財産分与も原則として税金はかかりません。
離婚により相手方から受け取った場合、基本的には贈与税などがかかることはありません。
これは、例外も合わせて国税庁のHPにも以下のように記載されています。
” 離婚により相手方から財産をもらった場合、通常、贈与税がかかることはありません。これは、相手方から贈与を受けたものではなく、夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けたものと考えられるからです。”
引用元:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4414.htm
土地や建物などを財産分与した場合には税金が発生します。
相手に対して土地や建物を渡し財産分与を行った場合、分与した方(不動産や建物を渡した方)が譲渡所得の課税が行われます。
相手から土地や建物を受け取った場合は、将来受け取った土地や建物を売却する際に課税が行われます。
基本的には、財産分与を受けた日を基準に「長期譲渡」か「短期譲渡」かなどを判断し課税がされます。
養育費なども扶養義務に基づいて渡されるお金のため、原則として所得税などの税金はかかりません。しかし、将来の養育費などを一括で受け取った場合などは生活費及び教育費の取扱いにおける「必要な都度直接これらの用に充てるために贈与によって取得した財産」の範囲を超えてしまうため別途で贈与税の課税の対象になる場合があります。
(生活費及び教育費の取扱い)においての詳しい説明はこちら
本テーマである離婚解決金の場合でも、通常は慰謝料と財産分与ですので、税金はかかりません。
しかし、高額な場合には贈与があったとして贈与税がかかる可能もあります。
「離婚解決金」はそれほどメジャーな言葉ではありませんが、制度としては簡単でフレキシブルで、有用性がとても高いです。特に協議離婚の際には得られなかった"慰謝料"の代わりになるのは大きいです。
ただ、ひとつ問題を挙げるとしたら、その認知度の低さです。「離婚したい」と言われ、「では離婚解決金をください」とはなかなかいきません。
そこで、離婚解決金を知るだけではなく、なるべく高い金額をもらうためにも、離婚を切り出されたら弁護士に相談するというスタンスでおられることをおすすめします。
離婚はマイナスなことではなく、2人の再出発です。あらゆる面で後悔のないリスタート地点に立ってください。
今回の問題を含め、離婚時はさまざまな法的要素を伴います。少しでも不安がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
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2020年03月17日 離婚慰謝料弁護士ガイド 編集者
2020年08月11日 離婚慰謝料弁護士ガイド 編集者
2021年02月22日 離婚慰謝料弁護士ガイド 編集者
2020年04月27日 離婚慰謝料弁護士ガイド 編集者
2019年08月06日 離婚慰謝料弁護士ガイド 編集者