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離婚の時に書面に残した義務を相手方が果たしてくれない! それを法的に履行させる方法とは?

更新日:2020年08月11日
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 民法では“契約”にいくつかの種類があります。本記事のテーマである「離婚の時に書面に残した義務」を法律の観点から契約ごとに分類すると、当事者が互いに経済的な対価を支払う旨に合致し、それを書面に残した契約、ということになります。では、その契約を遂行してくれない相手方に対しては、どのような措置がとれるのでしょうか。

契約は成立しているのか

 ○まず「諾成契約」とは、当事者(夫婦間)の意思表示が合致するだけで成立する契約です。つまり、「離婚しよう」「はい、離婚しましょう」と双方の意思が合致するだけで、契約は成立します。
●次に、民法763条及び764条で定められた「協議の離婚」をみると、離婚の意思の明確化や第三者に対して公示が必要なため、要式契約であるとされています。
※『第三者に対して公示』とは、離婚したという事実を公にすることです。
例えば住民票、戸籍等、金融機関、パスポート、職場等、変更しなければならない手続が挙げられます
 話が前後しましたが、つまりタイトルのケースでは、
○「離婚の際に」=(双方の意思が合致したので)諾成契約が、
●「書面に残した」=(離婚届の記入及び提出が必要なので)要式契約が、
成立しているといえます

債務不履行

 『債務不履行(さいむふりこう)』という言葉はご存知でしょうか。債務不履行は、契約の対になる法律用語です。少しずつ理解を深めていきましょう。

債務不履行の定義

『債務不履行』は、
広義:債務が弁済されないこと
狭義:損害賠償責任を伴う債務不履行
と定義されます。本記事では、「離婚の時に書面に残した義務」と具体的な事例なので、協議の損害賠償責任をみていきます。

債務不履行の法的位置づけ

 債務不履行とは、歴とした契約違反行為です。民法においては、なんらかの約束(=契約)が交わされたにもかかわらず、正当な理由もなしにその約束を守らなかった時、債務不履行という違反行為が発生します。そして、債務を履行しなかったことにより不利益を被った場合、損害賠償請求権が発生します。

不法行為との違い

 債務不履行には契約があることが前提です。契約がない状態でただ単に犯した違法行為は、“不法行為”と呼ばれ、債務不履行とは異なります。債務不履行には、必ず正当な契約がなければなりません。

判決

債務不履行の分類

 実は、債務を履行しないというだけで、債務を履行する側が法的に債務不履行責任を問われることはありません。その責任を発生させるためには、一定の条件が必要です。以下、ご覧ください。

履行遅滞

 履行遅滞は、履行が可能であるにも関わらず、定められた日時までに履行しないことを指します。例えば、お金はあるのに約束の日に間に合うように振り込まない、等です。
履行遅滞による債務不履行責任が発生する要件はいくつかありますが、
・履行が可能であったこと
・履行期を経過したこと
の2点が重要です。ただ注意すべきは、履行が遅れた、という時、債務者にやむを得ない事情や正当な理由があれば、履行遅滞とは呼べなくなることがあることです。

履行不能

 履行不能は、履行が不可能になったため、履行をしなかった債務不履行を指します。要件は、
・履行が不能となったこと
・履行がされなかったことについて、債務者に帰責事由があること
・履行がされなかったことが違法であること
です。履行が不能になる、というのは、物理的な不能(譲るはずの家が火災で滅失した等)だけでなく、法律上、事実上履行が不能となってしまった場合も含まれます。
 但し、金銭債務については、この世から金銭がなくなる、ということは社会通念上あり得ないので、履行不能には当たらない、とされています。

③不完全履行

 不完全履行とは、債務の履行が、「足りなかった」とお考えいただくのが分かりやすいかもしれません。こちらもいくつか要件があります。
・履行期に完全な債務の履行が可能であったこと
・債務の履行が不完全であったこと
等が挙げられます。一応の債務の履行がなければ前述の“履行遅滞”で、そもそも完全な履行が不能であったのなら“履行不能”に該当しますので、細かに定められていることが分かります

一人の男性

債務者に対抗出来る手段

 では、相手方が債務不履行の状態に陥った場合、こちらは何をすればいいのでしょうか。ここから、まさに本記事のタイトルである、「法的に履行させる方法とは?」にフォーカスしていきます。

請求する権利

 相手方が履行不能でない限り、債権者は履行請求権を行使することが可能です。債権者は、債務者に早く支払うよう請求する権利を持つということです。

強制履行

 履行請求権をかざしてもなお債務が履行されない場合、債権者は強制的に債務の内容を実現させることが出来ます。それが「強制履行」です。そんな強制履行は、4つのタイプに大別されます。
○直接強制:債務者の意思不問で、直接に債務の内容を実現させる方法
○間接強制:裁判所が債務者に損害賠償等を命じることにより、プレッシャーをかける
○代替執行:第三者を債務の内容の実現のために使役する(費用は相手方が負担)
○意思表示業務の執行:意思表示をせよという判決で、現実に履行があったものとする

損害賠償請求

 債務不履行については、不利益を被った場合、損害賠償請求が出来ます。そしてそれには精神的損害も含まれることがあります。
 民法の債務不履行の条文には明記されていませんが、裁判所の判断で慰謝料(=精神的損害)の支払いを認めた例もあります。

終わりに

 以上のように、協議離婚時に素人が作成した書類で相手方に義務を履行させるには大変だということが分かりました。
 そんな時いちばん役立つ方法が、『離婚時の「口約束」は立派な『契約』!書面でさらに堅実さUP◎』でご紹介している「離婚協議書」や「公正証書」を利用することです。
 特に「公正証書」は強制執行が可能で、相手方の財産を差し押さえることも出来ます。
 ですが、いちばんよい離婚というものは、話し合いを真摯に重ね、お互いを尊重する、というものではないでしょうか。紙切れ一枚に左右されない、お互いの幸せをお祈りしますが、どうしてもうまくいかない場合においては、弁護士に項目ごとの法的効力の有無や、よりよい手段等を確認してみるのもよいでしょう。

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離婚慰謝料弁護士ガイド 編集者

離婚問題に関する記事を専門家と連携しながら執筆中 離婚問題でお悩みの方は是非参考にしてみてください。 また、お一人で悩まれているなら一度弁護士へのご相談を強くおすすめ致します。 今後も離婚問題に関する情報を多数発信して参ります。

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