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5分でわかる:死後離婚

更新日:2020年12月08日
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 あなたは『死後離婚』という言葉をご存知ですか? 最近では、夫が亡くなった後に、『死後離婚』の手続をする女性が増えています。
 その内容としては、妻にとってよい条件ばかりです。夫の存命中はどうしても離婚できなかった方に向け、『死後離婚』について見ていきます。

『死後離婚』とは

 まず初めに知りたいのが、一体『死後離婚』とはどんな制度なのか、ということでしょう。死後離婚に使う離婚届は、一般的に見る離婚届とはどう違うのでしょうか。

死後離婚の法的手続

 実は、死後離婚という言葉はメディアの造語で、法律上は存在しません。夫婦の婚姻関係はどちらかの死亡で解消します。
 夫婦が離婚した場合、配偶者の血族との姻族関係は自動的に終わりますが、民法第728条2項によると、死亡した相手方との姻族関係を終了させるためには、「生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示」しなければなりません。
 つまり、死後離婚を行うためには、『姻族関係終了届』を市町村役場に提出しなければならないのです。

遺族年金

 生前に離婚した場合はその後に配偶者が亡くなっても遺族年金はもらえませんが、配偶者が亡くなった後は自動的に、婚姻関係がなくとも遺族年金が手に出来ます。
 これは、『姻族関係終了届』を提出したとしても、戸籍上にその事実が記載されるだけで、除籍されるわけではないからです。
 そのため、夫との関係は“死別”になるので、遺産や遺族年金は変わらず受け取れます。

死後離婚の現実

 法務省によると、2015年度の死後離婚の届出数は2,783件で、2006年度からの10年間で1.5倍に増えています。

メリットとデメリット

 当然のことながらデメリットもあります。

死後離婚のメリット

 遺産や遺族年金については前述の通りです。他のメリットを挙げると、
・義理の両親や兄弟姉妹との縁を切ることが出来る
・夫と一緒の墓に入らなくてもよくなる
・墓を守る義務もなくなる
といった点です。確かに、夫が亡くなった後に夫の両親の介護や祭祀を司るのは精神的負荷がとても大きいものです。その義務から解放されるのはメリットとして大きいでしょう。

死後離婚のデメリット

 まず、『姻族関係終了届』を出す上で、この書類は一度受理され縁が切れると、二度と取り消すことが出来ません。
 さらに、法事に関しても、ほぼ行けなくなるでしょう。自ら墓参りに行く程度のことは出来ますが、法要の連絡が来るはずもなく、年忌法要に参加出来なくなるという覚悟が必要です。

メリットか、デメリットか

 これは、子がいた場合に特に問題となる点です。
 自分自身は姻族と縁を切っても、子は祖父母とは血族になるため、その関係は継続します。その時、自分が縁を切ったことによって、子に何らかの影響が出来ることは必至でしょう。
 そのように、子どもへの負荷も考慮しておかねばなりません。

終わりに

 以上、増加の一途をたどる『死後離婚』についてご紹介させていただきました。双方の存命中には達成出来なかった離婚を、相手方の死によって成立させられる画期的な制度のように思われますが、届出をする際は、あらゆる可能性を考慮した上で、冷静に行っていただけたらと思います。

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離婚慰謝料弁護士ガイド 編集者

離婚問題に関する記事を専門家と連携しながら執筆中 離婚問題でお悩みの方は是非参考にしてみてください。 また、お一人で悩まれているなら一度弁護士へのご相談を強くおすすめ致します。 今後も離婚問題に関する情報を多数発信して参ります。

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