このところ「熟年離婚」という言葉をよく聞くようになりました。
熟年夫婦の「熟年」にははっきりした定義がありませんが、婚姻期間がおおよそ20年以上の夫婦のことを熟年夫婦と呼ぶそうです。この熟年夫婦が離婚することを熟年離婚と言います。
長年連れ添ってきた夫婦が離婚してしまう原因は一体何なのでしょうか?
熟年に定義が無い以上、はっきりとした熟年離婚の件数を把握することはできませんが、熟年離婚の調査を行ったものの多くが「熟年離婚の件数は増加している」としています。
熟年離婚が増加している原因は、離婚に対する価値観の変化や年金制度の改正にあると言われています。
様々な熟年離婚の原因について探ってみましょう。
●離婚に対する価値観の変化
これまでは「年を取ってから離婚するのは恥ずかしい」「男は女を養わなければならない」といった価値観から離婚に踏み出す人が少なかったようですが、時代が変わって「我慢をしてまで辛い婚姻生活を送ることは無い」「女性も働くようになったので男性だけが養う必要は無い」というように少しずつ価値観が変化してきたことが熟年離婚の原因の一つだと考えられます。
●配偶者に対する不満
これは老若男女問わず共通することですが、特に昔の女性は男性優位の社会の中で夫に対して従属的だったことが不満で、それが長年の婚姻生活でつもりつもって離婚を考える原因になることがあります。例えば
・暴言を吐かれ続けていたが我慢していた
・家事をするのが当たり前になっており、夫の退職後も自分一人が家事をしている
といったケースがあります。
また、他にも
・そもそも一緒に居たくなかった
・義実家から解放されたい
・浮気をされたが我慢していた
など、色々な原因が考えられます。
●年金制度の改正
年金制度の改正によって、2008年4月以降は婚姻期間中に配偶者が払った保険料の一部(最大半分)を夫婦で分割することができるという制度へと変わりました。
そのため、離婚後に収入が無くなり生活ができなくなるという不安から離婚をせず我慢していた配偶者が、離婚を切り出すことになるケースが増えたと言われています。
離婚をした後にどう生活するのか考えておかないと、離婚後の生活が困難になってしまう可能性があります。
熟年離婚の場合は「高齢である」ことが1つのポイントです。
例えば就職しようとしても、年齢制限に引っかかってしまってなかなか就職できないことが考えられます。
離婚する前に、以下のポイントをおさえておきましょう!
①離婚後の家賃や生活費が確保できるか
離婚後に毎月いくらお金がかかるかをまず計算しましょう。
家賃や生活費がなければ生活していくことはできません。そのため、生活していくだけのお金を毎月用意するために就職するのか、年金で賄っていけるのか、貯金を切り崩せば生活できるのか…など離婚後、生活ができるだけのお金を確保できるかどうかということを考えておかなければなりません。
お金の計算が苦手な方は、ファイナンシャルプランナーなどに相談してみましょう。
②年金分割制度を使う
年金分割制度を超簡単にまとめると「婚姻期間中に納めた厚生年金を夫婦で分ける制度」です。(実際はもっと複雑な制度ですので、あくまで超簡単にまとめただけということをご了承ください。)
年金分割制度を使えば、月に数万円程度、年金が増額しますが、生活できるレベルかどうかはやはり計算しておく必要があります。
年金分割制度によって分割する年金は保険者の種類や支払っている年金保険によって異なります。厚生年金・共済年金は2008年4月以降の部分については自動的に分割されます。また、国民年金は夫婦それぞれに加入しているため分割する必要はありませんが、企業年金や確定拠出型年金については協議をする必要があります。
かなり複雑な制度ですので、利用する際には弁護士や社会保険労務士などに相談してみたほうが良いでしょう。
③財産分与をする
財産分与によって、婚姻生活中に夫婦共同で築いた財産をそれぞれの貢献度に応じて分配することができます。退職金も財産分与することができますので、既に退職金を受け取っている場合は話し合った割合で分割をすることになります。在職中の場合も、財産分与の対象にできる可能性があります。
退職金については、そもそも退職金をもらえる会社ではない場合や、会社の運営がうまくいっていない場合、配偶者の勤務状態が良くない場合などは分割をしないほうが良いケースがあります。
また、財産分与の対象には借金などのマイナスの財産も含まれます。
財産分与の対象となるマイナスの財産は夫婦の共同生活のために負った借金などで、具体例としては生活を送るために借り入れた生活費、家族のために購入した車や家のローンなどがあります。明らかに生活費を超える借り入れや、ギャンブルなどのための借金は含まれません。
マイナスの財産があった場合の財産分与の考え方は次のようになります。
プラスの財産>マイナスの財産
→この場合は残ったプラスの財産について財産分与します。 プラスの財産<マイナスの財産 →この場合は借金をした配偶者が残ったマイナスの財産を背負います。もう一方の配偶者は、財産をもらえない代わりに負債を背負わずに済むことになります。 |
財産分与について判断が難しい場合は、弁護士などに相談することをおすすめします。
⑤親権
熟年離婚といわれるような夫婦に子供がいた場合、子供は成年している可能性が高いですので、あまり親権については影響がありませんが、未成年の子供がいる場合は当然親権の問題が発生します。
未成年の子供がいる場合はどちらが親権者になるのかを決める必要があります。
話し合いで親権者が決まらない場合は調停で、調停で決まらない場合は裁判を起こすことになります。
慰謝料は、精神的・肉体的に苦痛を受けた人に対して支払う賠償金のことですので、熟年離婚の原因が「性格の不一致」や「一緒にいるのが苦痛」という理由だけでは慰謝料を請求することはできません。離婚の原因が暴力(DV)や暴言(モラハラ)だった場合には請求することができるということです。
熟年離婚をする場合の慰謝料はかなり重要です。
離婚をした後は配偶者の収入を頼ることができなくなりますし、年金をすぐにもらえる年齢でない場合は年金に頼ることもできません。また、婚姻中や離婚後に滞納をしていた場合は年金をもらえる年齢でも受給してもらえない可能性があります。
年金をもらえるようになる年齢までの間の生活を慰謝料で賄う必要も考えられますので、慰謝料をもらえる場合はきちんと請求しましょう。
熟年離婚を考えている方は、離婚問題に強い弁護士に相談するようにしましょう。
特に熟年離婚をする場合は離婚後の収入の有無によってはかなり慎重に進めていく必要があると考えられますので、弁護士に依頼するかどうかは別にして、一度弁護士に相談しておいた方が良いと思われるからです。
弁護士事務所の中には無料相談を行っているところもあります。
色々と相談をしてみて自分に合う、離婚問題に強い弁護士を探してみましょう。
長年連れ添った夫婦だからといって、死ぬまで一緒にいてくれるとは限りません。
配偶者が長年にわたって不満を溜め込んでいる場合は、急に離婚を突き付けられてもおかしくないということがわかりました。
うちは大丈夫だと安心しないで、配偶者が不満に思っていないか一度話し合ってみたほうが良いかもしれませんね。
2018年12月29日 離婚慰謝料弁護士ガイド 編集者
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