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育児ノイローゼを原因に離婚できる?

更新日:2020年08月25日
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子育てをしていると子供の泣き声にイライラしたり、狭い家の中に子供とだけ過ごすことで孤独を感じたり、子育てについて悩むことがあります。
 子育てを頑張っているママさんの中には育児に関するストレスが溜まってしまい育児ノイローゼになる方もいらっしゃいます。
 育児ノイローゼによって、離婚を考える夫婦は少なくありませんが、果たして育児ノイローゼを原因として離婚することはできるのでしょうか?

育児ノイローゼは離婚原因になるのか?

 育児ノイローゼの原因は
・子供によるもの
・夫によるもの(家事も育児もしない)
・頼る人がいない
・24時間育児をしなければならない
・育児がうまくいかず自分を責めてしまう
 など色々な原因があります。
 育児ノイローゼになってしまった原因が例えば夫によるものが大きかった場合、今までのように夫婦生活を送ることができないので離婚をしようと考えてしまうこともあるでしょう。

離婚をするには、夫婦で話し合って離婚を決める「協議離婚」や家庭裁判所での話し合いによって離婚を決める「離婚調停」をします。それでも離婚が成立しなかった場合は、裁判所で「離婚裁判」をすることとなります。離婚裁判によって離婚が認められたら離婚をすることができます。
 裁判所で離婚を認められるためには、民法第770条1項に定められている次の離婚原因が必要となります。
1 配偶者に不貞な行為があったとき
2 配偶者から悪意で遺棄されたとき
3 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
4 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
 この中に育児ノイローゼを原因とする離婚原因はありませんので、「5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するかどうかという点がポイントとなります。

 「4 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」という原因には育児ノイローゼは当てはまりません。ここで言う強度の精神病とは「正常な夫婦生活を継続して送ることができない程の重い精神病」のことを言い、実際の判例で認められたものの多くは統合失調症だそうです。
 精神科医の診断をもとに重い精神病かどうかを裁判所が判断することになりますが、育児ノイローゼやアルコール中毒、ヒステリーなどはこれに当てはまらないとされています。

 そういうわけで育児ノイローゼは直接離婚原因にはならないことがわかりました。
 夫婦の一方が子育てに協力しなかった・全くしなかったというだけでは離婚原因にはならないということですね。
 しかし、育児や育児ノイローゼが原因で、例えば“長期の別居状態になってしまっている”“育児ノイローゼが原因で夫婦喧嘩が絶えなくなってしまった”などといった状況など、夫婦関係が修復不可能なほど悪化している場合は離婚原因となる可能性があります。
 

育児ノイローゼによる慰謝料の請求は可能か?

 離婚で慰謝料が支払われるケースは以下のようなものです
  ●不貞行為
    ・浮気
    ・不倫
  ●肉体的・精神的暴力
    ・DV(暴力・経済的暴力・性的虐待・社会的隔離など)
    ・モラルハラスメント(精神的暴力)
  ●悪意の遺棄
    ・生活費を入れない
    ・家を出たまま、実家に帰ったままなど家に帰ってこない
    ・健康な夫が働かない
    ・専業主婦の妻が家事をしない
    ・共働き夫婦なのに夫(妻)が家事をしない
    ・性行為の拒否(セックスレス)
    ・性行為の強要
    ・性交不能

 ここに挙げられる中に育児ノイローゼが原因のものはありません。
 育児ノイローゼというだけでは慰謝料を請求することは困難だと言えます。

 例えば育児ノイローゼが原因で相手方に不貞行為をされた、DVやモラルハラスメントをされたとなれば慰謝料を請求することは可能ですが、相手方が育児に協力してくれなかったせいで育児ノイローゼになったので慰謝料を請求するということはほぼ不可能だということです。

 ちなみに慰謝料がいくらぐらいになるかは、離婚原因によって異なります。
 相場は次の通りです。
不貞行為⇒100~500万円
  この金額は配偶者と浮気や不倫の相手方の両方から慰謝料を受け取った場合のものです。

精神的・肉体的暴力⇒50~500万円
 状況によって金額が異なります。暴力を受けた回数や期間、程度がそれぞれ異なるためです。

悪意の遺棄⇒50~300万円
 状況によって金額が異なります。

育児ノイローゼによって離婚してしまう前に

 離婚と育児ノイローゼは直接関係が無いように感じるかもしれませんが、そうではありません。育児ノイローゼになる原因として夫婦関係が大きく関係しているからです。
 育児ノイローゼが原因で離婚に発展するケースの主なものをチェックしておきましょう。

 ●夫が育児に協力してくれない
  育児に協力的な夫が増えているのは「イクメン」という言葉が流行したことからもわかりますが、その割合はまだ多いとは言えないのではないでしょうか。
  夫からすると、激務で家に帰るのが遅い、休日も仕事があるなどなかなか育児に参加できないという事情もあるかもしれませんし、育児は母親がするものだと考えている人もいるかもしれません。
  しかし育児ノイローゼになってしまう原因は子育ての負担からくるものです。
  妻一人に24時間の育児を任せきりにしてしまうと負担が大きいですので、夫も可能な限り育児をして、負担を少なくする必要があるでしょう。

 ●夫が家事にも協力しない
  育児に協力しないどころか、家事まで妻に任せきりという夫は離婚を突き付けられても仕方がないと言えます。
  結婚をしていなければ一人で家事をしなければなりませんので、家事ができないからというのはいくら仕事をしていても言い訳にはなりません。
  育児に休みはありません。何なら子供が赤ちゃんのうちは、妻は24時間365日無休で育児をしていると言っても過言ではありません。苦手でも少しぐらいは家事に協力し、負担を減らしてあげましょう。

 ●夫婦の会話が無い
  子育てに悩みはつきものです。妻は育児についての相談を夫に聞いてほしいものですが、疲れているから聞きたくないなどと相談を聞いてくれない夫は少なくありません。
  もちろん中には仕事で妻との時間がすれ違っているという方もいらっしゃると思いますが、少しの時間でもいいので妻の話を聞いてあげてください。
  また、妻も育児にかかりっきりで夫をほったらかしにしてしまうと、夫も寂しい思いをしてしまいますので、夫婦どちらも会話の時間をきちんととることが大切です。

育児ノイローゼになってしまうと、悲観的になったりやる気をなくしてしまったりなど、身も心も不安定になってしまいます。また、産後はホルモンバランスが崩れて産後うつになってしまう可能性もあります。
さらに育児中は昼夜問わず赤ちゃんが泣いて、なかなか寝ることもできませんので自律神経も乱れます。「とにかく辛い!」といった状況になってしまいますので、そんな妻をねぎらうこともせず、辛さを理解しようともしなければ妻は離婚を考えてしまうでしょう。

育児ノイローゼによって実家に逃げた妻とそのまま別居状態になってしまった、離婚することになり親権争いになった…など、幸せだった夫婦が悲しい結末を迎えてしまう事にならないように、まずはきちんと夫婦で話し合う時間を作ってみてください。妻の相談も面倒くさがらず、聞いてあげてください。
また、夫は育児にきちんと参加し、妻の負担を減らすために家事にも協力しましょう。

 妻も、育児に熱心になるあまり夫を放置したり文句ばっかり言ったりしないようにしましょう。行き過ぎると夫は嫌気がさして出て行ってしまうというケースもあります。
 妻目線での内容が多いですが、もちろん逆もしかりです。夫が家事育児をメインにしている場合は妻も協力をすることが大切です。夫婦はお互いに思いやりを持つことが重要ですね。

離婚時夫婦で築いた財産は財産分与する

 財産分与とは「婚姻生活中に夫婦共同で築いた財産をそれぞれの貢献度に応じて分配すること」をいいます。
 財産分与の割合は、夫婦の収入に関わらず原則は1/2です。
 夫婦の一方が専業主婦(夫)だったとしても、内助の功が認められていますのできちんと財産分与を受けることができます。
 ただし、財産分与の割合は法律で1/2と決められているわけではありませんので、財産分与を話し合いによって決める場合は自由に割合を決めることができます。

わからないことは専門家に相談

 育児ノイローゼを放置してしまうと、離婚はもちろんですが子供を叩いてしまうといったケースに発展してしまう可能性もありますので、話し合いなどによって解決しない場合は心療内科を受診する、育児の専門家に相談するなどをすることをおすすめします。
 また、離婚をすることになった場合もわからないことは法律の専門家である弁護士に相談してみましょう。

まとめ

 育児は想像以上に大変です。悩みも尽きません。
 特に真面目で育児を頑張ろうと必死になっている方は育児ノイローゼになりやすいので、配偶者の方はしっかり話を聞いてあげる、協力してあげるなどして離婚を避けるように努力してみましょう。

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離婚慰謝料弁護士ガイド 編集者

離婚問題に関する記事を専門家と連携しながら執筆中 離婚問題でお悩みの方は是非参考にしてみてください。 また、お一人で悩まれているなら一度弁護士へのご相談を強くおすすめ致します。 今後も離婚問題に関する情報を多数発信して参ります。

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