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親権は誰のための権利義務?キーワードは“子の福祉”

更新日:2020年07月21日
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 離婚をするとき、金銭面と共に争点になるのが、「親権」です。離婚をしても子どもは子ども。決して譲ることの出来ない「親権」について、この記事では、相手方より一歩リードする知識・方法を学んでいきたいと思います。

親権とは

 親権とは、子どもの利益のために、子どもを監護・教育する権利義務を指します。“子どもの福祉”を守るものですので、親が子どもを支配し、思い取りに扱えられる権利ではありません。
そんな親権は、「身上監護権」「財産管理権」という権利に分けられます。

「身上監護権」

 まず、「身上監護権」とは、子どもの身分法上の行為を同意・代理する“身分行為の代理権”、子どもを生活させるための“居住指定権”、教育上子どもを叱る“懲戒権”、子どもを働くことを許可する“職業許可権”から構成されています。
 いずれも「権利」とされていますが、その半面では、社会的に未熟な子どもの成長を図らなければならない「義務」でもあります。

「財産管理権」

 対して「財産管理権」には、①包括的な財産の管理権、②子どもの法律行為に対する同意権、という2点が含まれます。それぞれを見てみると、

包括的な財産の管理権

「管理」には事実行為も法律行為も含まれ、「処分」も含まれます。但し、親権者に求められているのは「自己の為にするのと同一の注意義務」で足ります。
 と言っても、子どもが成年に達したときは、親権者は遅滞なく管理計算をする義務があります。

子どもの法律行為に対する同意権

子どもに意思能力があれば、子どもが法律行為をして、親権者が同意を与えることも出来ます。しかし、同時に代理権を失うわけではありません。
 また、労働基準法上では、親権者が子どもに代わり労働契約を結ぶことを禁じています。

協議離婚

 離婚が決まった夫婦が、話し合いで離婚を成り立たせる、ということを「協議離婚」と呼びます(いわゆる「普通の離婚」)。
 協議離婚では互いの合意さえあれば、あらゆる約束(契約)を結ぶことが出来ます。この時、親権に付随する養育費等の決め事をした場合、離婚後のことを考えて、内容を必ず書面にて残しましょう。

調停離婚

 協議離婚で決着がつかなければ、調停離婚に臨みます。調停は、当事者らが家庭裁判所まで出向き、男女1名ずつの調停委員(と裁判官)のサポートの下、話し合いをします。
 言い分に沿って双方の意思を展開していき、互いが納得できた時点で調停が成立します。

離婚調停の申立て

離婚調停の申立てをするのに必要となるのが、
・夫婦関係調整調停申立書
・申立人の印鑑
・申立人の戸籍謄本
・相手方の戸籍謄本
で、申立ては相手方の住所を管轄する家庭裁判所で行います。

離婚調停の流れ

 離婚調停は、①家庭裁判所への申立て→期日決定→第一回調停→必要に応じて調停→調停終了、というステップを踏みます。

家庭裁判所調査官

 聞き慣れない方もいらっしゃると思いますが、家庭裁判所には“家庭裁判所調査官”という資格を持つ専門家がいます。調査官は、裁判所の命令により、あらゆる方面での調査に当たります。

家庭裁判所調査官の役割

調査官は、①子どもとの面談、②家庭訪問、③学校訪問を通じて、その子どもの心理状態を理解し、生活環境を確認し、気持ちを摑むよう努めます。

家庭裁判所調査官が調査する内容

・親権者になるのが適当か
⇒愛情があるか、これまでの養育状況、経済力はあるか
・子どもを養育していた環境について
⇒養育の主体はどちらだったか
・今後の養育方針について
 ⇒監護養育、場所等
・相手方が親権者となるのが不適当かどうか、またその理由について
 ⇒以上の総合的評価
を、調査し、親権の獲得に当たっては、家庭裁判所調査官自身とその調査内容は、調停や裁判で非常に重要な影響力を持ちます。

親権を見極めるポイント

 家庭裁判所調査官と調査内容にプラスして親権の判断になるポイントをご紹介します。
・これまでの監護状況
 ⇒最も重視されるのが、この、どちらが主体的に養育してきたか、です
・子どもに対する愛情
 ⇒客観的にみて、より大きい愛情がある方が、親権者になるということが多い傾向です
・肉体的・精神的に健康であること
 ⇒病気を抱えていると、親権者になるが難しくなる可能性が高くなります
・子どもの年齢
 ⇒年齢が低いほど、母親が親権を獲得する傾向があります
・子どもの意思
 ⇒子どもの意思は重要です。子どもが15歳以上の場合、本人の意思が尊重されます
・育児する時間
  ⇒子どもと一緒に過ごす時間が長い方が、親権獲得率が高くなります
・経済的余裕
  ⇒子育てはお金がかかるので、経済的余裕がある方が親権をもつ方が良いとされます

赤ちゃん

父親側が親権を獲得するためには

 離婚時の親権争いで、父親が親権を獲得できる確率は低いです。母性優先については“三歳児神話”という言葉があるほどで、子どもたちは9割以上母親を選び、家庭裁判所でもその傾向があります。
 では、父親が親権を勝ちとるには、どうしたらよいのでしょうか。

父親が親権を得づらい理由

・フルタイムで働いているため、子育てが難しいから
・離婚後、母親側から養育費を得られなそうだから
・子ども本人が母親を選ぶことが多いから
・離婚経験者は「母親が親権を得た」事例が多いから
・離婚後にライフスタイルが変わりにくいと思われるから
が挙げられます。
 裁判官・調停委員・捜査官は「子の福祉」を重要視します。その場合、子どもと同居している母親の方が有利になるだろう、と推定されることが多いのは否めません。

夫婦関係と子ども

 妻に対して不満を抱いている父親もいます。妻の不倫で夫婦関係が破綻した、等の場合はことさらです。しかし、夫婦のどちらかに落ち度があっても、子どもには関係ないので、親権を決定する際マイナスにはなりません。(但し、裁判官等の心証は悪くなるでしょう。)

父親が親権争いを有利にするには

 ここまでお読みいただいたうえで、父親側が親権を勝ちとるのは困難を極める、ということがおわかりいただけたと思います。では、そんな中で父親が取れる手段とは何でしょうか。それは話し合いの時にコツがあるのです。それは、
① 常識的で余裕のある態度で接する
② 自分が親権を取るうえで有利となる事実をしっかりと説明する
③ 子どもとの関係等を、出来るだけ詳しく具体的に説明する
一見シンブルですが、子どもへの情熱と、現実に子どもを引き取るメリットを冷静に語ることが出来れば、感情方の母親より信頼してもらう可能性も高くなります。
 また、タイムテーブルを作成し、自分がどれほど子どもの養育に時間を割けるのかをまとめておくこともよいでしょう。

泣いている赤ちゃん

<コラム:親権なんていらない>

ここまでいかにして親権を手に入れるかについてお話してきましたが、母親側・父親側共に親権を欲さず押し付け合う夫婦がいるのも事実です。

親権者は決めなければならない

 夫婦が互いに親権者になることを望まない場合でも、子どもを施設に入れたり、他の監護者に養育を委託したりするためには親権者を決める必要があります。親の気持ち次第で、親権を放棄することは出来ません。

子の福祉

 とはいえ、親権を無理やり押し付けても、子の福祉にはなりません。そのため、「やむを得ない事由があるとき」は、民法上親権者を辞任することが出来ます。その具体的な事例としては、重病である、刑に服している、海外に滞在している、等が、辞任が許可されました。
「やむを得ない事由」が出来てしまった場合、相手方に親権の変更を申立てる必要があります。変更が可能かどうかは、子の福祉を考えて家庭裁判所が判断を下します。

親権の喪失

 無理矢理に押し付けられた子は、監護養育がきちんと果たされない危険性があります。虐待等がなくとも、子どもを放置したりすると、親権の消極的濫用とされ、親権を喪失させることが出来ます。

<終わりに>

 親権に対する事例や要件をみてきましたが、お金がなくとも親権を得たいと思う親がいれば、コラムでご紹介したように権利義務をなすりつけあう親がいるというのも悲しい事実です。
 「あなたはなぜ親権が欲しいのですか?」と訊かれたとき、「子どもの幸せのためです」と胸を張って言える人こそ、真の親権者にふさわしいのではないでしょうか。

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離婚慰謝料弁護士ガイド 編集者

離婚問題に関する記事を専門家と連携しながら執筆中 離婚問題でお悩みの方は是非参考にしてみてください。 また、お一人で悩まれているなら一度弁護士へのご相談を強くおすすめ致します。 今後も離婚問題に関する情報を多数発信して参ります。

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