離婚慰謝料弁護士ガイド

離婚問題専門の弁護士検索・法律相談ポータルサイト

年金分割とは?仕組みや期限についてわかりやすく解説!

更新日:2019年11月05日
年金分割とは?仕組みや期限についてわかりやすく解説!のアイキャッチ

離婚をする時には様々なお金の話をします。
 夫婦の財産を分ける財産分与や子供の養育費などは有名ですが、「年金分割」についてご存知の方はどれほどいらっしゃるでしょうか。

 この記事では年金分割についてわかりやすく解説していこうと思います。

年金分割とは?

 年金分割とは年金を分け合うことで、基本的には収入が多い方から低い方へと厚生年金の年金記録を譲渡することで行われます。

 まず、年金は次のような仕組みになっています。

  厚生年金

(会社員や公務員が加入)

 
国民年金・基礎年金

(日本に住んでいる20歳以上60歳未満の全員が加入)

第1号被保険者

(自営業者など)

第2号被保険者

(会社員や公務員など)

第3号被保険者

(会社員や公務員に扶養されている配偶者など)

年金分割の対象となるのは婚姻期間中一方が第3号被保険者だった期間厚生年金の年金記録です。これによって年金記録が変わるため、上乗せされた年金記録分の金額が支給されることになります。
 
厚生年金に加入していない自営業者などの第1号被保険者(※1)や婚姻期間前の厚生年金記録、企業年金や個人年金など(※2)の上乗せ年金は年金分割の対象外です。

※1…婚姻期間中に厚生年金の加入期間がある場合はその加入部分は年金分割の対象となります。
※2…個人年金などは年金分割ではなく財産分与の対象となります。
 

年金分割の割合とは?

 年金分割には
 ①3号分割
 ②合意分割
 の2種類があります。分割方法によって年金分割の割合が異なります。

 ※この先厚生年金を納めていたのが夫という前提で説明していきます。

 ●3号分割
 3号分割は、2008年4月1日以降に第3号被保険者だった期間について夫の厚生年金の加入記録の半分を自動的に分割する制度です。
 3号分割の場合の年金分割の割合は必ず50%となります。

 ●合意分割
 合意分割をすると夫婦で話し合って合意した割合で割合を自由に設定して年金記録の加入記録の分割を行うことができます。
 3号分割に該当しないものは全て合意分割になりますので、2008年4月以前の第3号被保険者だった期間の部分や共働きの妻が扶養に入っていない場合は妻の厚生年金も夫の厚生年金と合算して分割の計算がされます。
 分割の割合は上限の50%までとなっています。

 例えば夫の収入が500万円、妻の収入が300万円で、割合を50%に設定した場合はお互いが400万円になるように100万円分の厚生年金記録が夫から妻に譲渡されます。
 対して3号分割が行われた場合で妻が婚姻期間中ずっと第3号被保険者だった場合、妻には250万円分の厚生年金記録が譲渡されます。

 年金分割は申請しなければ請求することができません。
 そのため年金分割することによって少なくなる場合やわざわざ申請をしなくても良いような場合(例えば夫婦の収入額が同じような場合)は無理に申請する必要はありません。

夫が会社員で妻が専業主婦だった場合

 結婚と同時に妻が会社を辞めて専業主婦になった場合、年金記録は次のようになります。

厚生年金

国民年金

厚生年金

(専業主婦)

 

国民年金

 

|←     婚姻期間     →|

これを年金分割すると次のように変わります

厚生年金

 

厚生年金

厚生年金

国民年金
厚生年金 (専業主婦)  
厚生年金  
国民年金
  |←     婚姻期間     →|

こうすることによって本来婚姻前の厚生年金と国民年金しかもらうことができなかった妻は婚姻期間中の厚生年金の50%を受け取ることができるようになったのです。
金額の相場は3万円~5万円程度となるようです。

夫婦共働きの場合

 共働きの場合は前述したとおり夫婦の厚生年金の記録を合算して最大50%までもらうことができます。
 共働きの夫婦が多い現代、妻の年収が多い夫婦も増えてきていると思います。
 専業主婦の場合は厚生年金記録を譲渡してもらうことによってたくさん貰えるようになった年金ですが、年収が多い妻が年金分割をしてしまうと逆に年金を減らすことになってしまいます。
 相場としては1万円~3万円程度だそうですが、やはり減らしたくないですよね。
 申請が無い限りは年金分割をする必要はありませんので、(夫側には申し訳ないですが)夫側から話が無い限りは黙っておいても良いかもしれませんね。

つまり請求するべきケースとしては
・専業主婦で収入が無い場合
・パートをしているが第3号被保険者(扶養範囲内)である場合
・配偶者の方が年収が多い場合
 ということになります。

年金分割請求には期限がある

 年金分割請求には期限が設けられています。
 請求期限は原則として
  ・離婚をした日
  ・婚姻取消をした日
  ・事実婚関係を解消した日
 それぞれの日の翌日から起算して2年以内となっています。
 この日を過ぎると請求することができなくなります。

 ただし、離婚の日から2年が経過する前に裁判所で調停または審判の申立てをしていた場合、調停が成立または審判が確定した日の翌日から1ヶ月が経過するまでの間は、年金分割請求をすることができます。

 逆に配偶者が離婚後に年金分割をする前に亡くなってしまった場合、年金分割の請求期限は死亡した日から1ヶ月以内に短縮されます。

 ちなみに3号分割については夫婦の一方の申請によって手続きをすることが可能なのですが、合意分割については夫婦双方で申請しなければなりません。
 しかし合意分割は離婚後になるため、離婚協議(話し合い)の中では合意分割することになっていても夫が約束を守ってくれず申請することができないというケースもあります。
 そのため合意分割をする場合は年金分割に関する内容を記載した離婚協議書を作成して、公正役場で離婚協議書を公正証書にしておいた方が良いでしょう。裁判の判決と同じ効力を持ちますので約束を破られる心配はありませんし、公正証書を必要書類に添付して年金事務所に改定請求を行うこともできます。

 年金分割制度を申請するためには戸籍謄本を集めたり、割合がわかる書類の作成などをしたりしなければなりませんし、申請はかなり複雑です。
 公正証書にする場合も同じく複雑で、かつ協議書の内容が自分に不利な内容になっていないかなどしっかりと把握できていないと、内容を覆すことが難しいため後々大変なことになってしまう可能性があります。
 また、割合を定めるにあたってはもめごとになるケースも少なくありません。
 そのため、年金分割を行う際には弁護士などの専門家に依頼することをおすすめいたします。

まとめ

 年金分割は夫婦の婚姻期間中に一方が第3号被保険者だった期間の厚生年金の年金記録を分割し、記録の少ない方に譲渡する制度のことを言います。
 対象となるのは厚生年金です。
 年金分割の方法は3号分割と合意分割の2種類があります。割合は最大で50%です。
 厚生年金を納めていない専業主婦や扶養範囲内でパートをしている方は年金分割をしたほうが良いでしょう。
 年金分割には期限があります。離婚後は速やかに年金分割の申請をしたほうが良いでしょう。
 複雑な申請に困っている場合や、裁判になった場合などは法律の専門家である弁護士などに依頼すると良いでしょう。
 気になることがあれば、無料で相談を受け付けている事務所なども多くありますのでまずは一度相談をしてみると良いのではないでしょうか?

この記事の著者

離婚慰謝料弁護士ガイド 編集者の画像

離婚慰謝料弁護士ガイド 編集者

離婚問題に関する記事を専門家と連携しながら執筆中 離婚問題でお悩みの方は是非参考にしてみてください。 また、お一人で悩まれているなら一度弁護士へのご相談を強くおすすめ致します。 今後も離婚問題に関する情報を多数発信して参ります。

この記事を見た人が見ている記事

熟年離婚をする時、“年金”の分割はどうなる?の画像

2021年08月25日 離婚慰謝料弁護士ガイド 編集者

弁護士保険ミカタで高額な弁護士費用を補償